友達オーディション
けれどなにも反論せず、されるがままに花柄のハンカチを口に詰め込まれている。

呼吸が苦しいのか直樹は顔をしかめているけれど、これは私達の安全のために椎名が考えてくれたことだ。

直樹は鼻の穴を大きく膨らませてゆっくりと呼吸を繰り返した。
「それじゃ、いくよ?」
椎名が直樹の後方に周り、床に膝をついていった。

ここからじゃなにがどうなっているのか見えないけれど、今直樹の指の爪にはペンチがねじ込まれているのだろう。

「うぅ……ぐっ」
直樹がくぐもった声を上げて体を小刻みに揺らす。
「結構力がいるね」

椎名が懸命に直樹の爪をはごうとしているのがわかった。
それでもうまく行かないのか、何度もやり直しているようだ。
「うぅ!!」
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