友達オーディション
椎名が望むから、こうして平気なふりをしているんだよ。
ハンカチが引きちぎれるほどに強く噛み締め、必死で痛みに耐える。

すべての爪を剥がされてしまった右手の感覚はもはや麻痺してしまっていた。
でもまだ終わらない。

これでようやく半分だ。
「じゃ、こっちの爪ね」
椎名が無傷な方の手を握りしめる。

その温もりを感じることができて嬉しいと思う。
恐怖と嬉しさがないまぜになって、呼吸ばかりが荒くなっていく。

「はい6枚目。頑張れ頑張れ奈美ちゃん」
本当に応援団みたいに抑揚をつけて歌う。
楽しげに、だけど真剣に。
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