友達オーディション
千佳だけじゃない。
私だって痛いのは嫌だし、苦手だった。
「千佳ちゃんだけ爪を残してあるから、これを追加するね」

椎名が事前に準備していた電気ケトルを手にとる。
電気ケトルはさっきからコポコポと水が沸騰した音を立てていたのだ。
「うぅ……う……」

電気ケトルを持って近づいてくる椎名を見て千佳が激しく左右に首を振った。
「ダメよ千佳ちゃん。自分だけ楽をするなんてフェアじゃないんだから」

椎名は嫌がる千佳の前に立つと、その頭上に電気ケトルをかざした。
千佳がギュッと目を閉じてうつむく。

少しでも顔にかからないようにしているのがわかった。
「千佳ちゃん上をむいて」
椎名に言われても千佳はうつむいたままで顔をあげない。
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