友達オーディション

それでも躊躇している直樹に背を向けて私はスマホを操作した。
緊急連絡先はすぐに表示されるようになっているから、通報するのに時間はかからない。

直樹が通報できないなら、私がすればいい。
私はもう完全に目が覚めているんだから。

「奈美。好きだ」
突然の告白と同時に後から抱きしめられていた。
予想外の出来事に驚き、私の手からスマホが落ちる。

画面がひび割れて暗転するのを見ても、後から抱きしめられているからかがんで拾うことができない。

「直樹……？」
「本当はずっとずっと奈美のことが好きだったんだ。椎名が来てからちょっと距離ができてたけど、あれもきっと椎名の香水の仕業だったんだな」