友達オーディション
☆☆☆

どうやら私は一週間も眠っていたみたいだ。
その間に体の傷は癒えてきていたけれど、両手はまだ包帯でくるまれていた。

なんでも私の爪は全て剥がれ落ちてしまっていたらしい。
どうしてそうなったのかは、やっぱり思い出せない。

きっと想像を絶する経験がそこにあるんだろうと思う。
だから、私は記憶を心の奥底へ押し込んで、忘れてしまったんだ。

入院生活が続いていた日曜日のことだった。
珍しい来客が来てくれた。
「奈美、高校のお友達よ」

お母さんの後ろから病室へ入ってきたのは見知らぬ男の子と、見知らぬ女の子だった。

男の子の方はしっかり日焼けした顔をしていて聡明そうに見える。
女の子の方はまるでモデルみたいに綺麗な顔とスタイルをしている。

ふたりを見た瞬間「わぁ」と、思わず声を上げてしまったくらいだ。
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