友達オーディション
「それなら奈美だって転校生の椎名ちゃんと仲良くなれるわよ」
「そうだな。大丈夫だろう」

どうやら両親は私が千佳と離れてしまうんじゃないかと心配しているみたいだ。
その心配は当たっているので、なにも言えなかった。

千佳だけじゃない、直樹もしのぶも英明も、最近では休憩時間のたびに椎名のもとへ向かう。
それが心の中にひっかかっていることは事実だった。

嫉妬心かもと思ったが、それとも少し違う。
まるで畏怖にも近い感情が胸の奥底に存在しているんだ。

私は残りのご飯をすべて口の中に押し込んでお茶で流し込むと「ごちそうさま」と早口に言って自分の部屋へと戻ったのだった。
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