友達オーディション
☆☆☆

数学の授業を受けている最中に前の席の重人のシャーペンが机の端から転がって落ちた。
青色のシャーペンは床に落ちてコロコロと少し転がり、通路の真ん中で止まる。

席を立たなくても手を伸ばせば届く位置にあるけれど、重人は一向にシャーペンを取ろうとしない。
「重人、シャーペン落ちたよ」
気がついていないのだろうと思って後から声をかけても返答はない。

ジッと見てみると重人の頭が下へ向いてたれていることに気がついた。
勉強熱心な重人が居眠り?

と思って背中をトンッと叩くと、「わぁ!」と声をあげて飛び上がってしまった。
本当に眠っていたんだろうか、驚いた様子で教室内を見回している。

「どうしたんですか?」
気難しそうなメガネをかけた数学の女性教師が重人を見てムッとした表情を浮かべる。

自分の授業を中断されたことが嫌なのだろう。
そこに生徒を心配する様子は見られなかった。
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