友達オーディション
☆☆☆

「あ~あ、なんだか喉が乾いちゃった」
次の休憩時間でも椎名はそれを呟いた。

また春美が教室からでていこうとしたけれど、直樹は「その必要はないよ」と、引き止めていた。
何度も何度も人に飲み物を買わせに行かせるなんておかしいと気がついたんだろう。

そう思って様子を見ていると、一旦自分の席へ戻った直樹がパックのオレンジジュースを持って戻ってきたのだ。
「これ、どうぞ」

少し頬を高揚させて椎名にジュースを差し出す直樹。
直樹はあれを椎名のために準備していたんだろうかと思うと、胸がズキリと傷んだ。

椎名と私では比べ物にならない、月とスッポンだ。
椎名がもし直樹のことを好きなったら潔く諦めるしかない。

「ありがとう。私がオレンジジュースが好きだって知ってたの?」
「いや。でもなんとなく飲むのかなって思って」
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