友達オーディション
☆☆☆

千佳に突っぱねられたときにはもうほっておこうと思ったけれど、やはり無視することなんてできなかった。
夜も遅い時間に校舎に人を呼び出すなんて普通じゃない。

千佳が危険が目に遭ってからじゃ襲いと判断した私は、夜の9時半くらいになると自分の部屋の窓を開けた。
街には夜の帳が降りているが、まだあちこちで明かりが灯っているし、車や人の行き交う姿も見える。

我が家では1階からテレビの音が漏れて聞こえてきていた。
窓から下を覗き込む。

下には小さな庭があり、芝生が植えられているが、今はそれが真っ暗な闇に見える。
私は部屋の隣にある雨水を流すパイプに手をのばす。

これがどれくらい強度のあるものかわからないけれど、足場といえばこのくらいしかない。
両手でしがみつくようにしてパイプを抱きしめ、そして右足をかけた。

ちょうど金具の部分に足を引っ掛けることができて、体制が保つ。
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