友達オーディション
今日は教室にいる人数も少なくてドアも締め切っているせいか、椎名の香水の匂いがひときわ鼻腔を刺激してくるようだ。

みんなはこの匂いをなんとも感じないんだろうか?
直樹へ視線を向けると、直樹はジッと椎名の動きを見つめている。

その顔はうっとりとしていて恋しているのがよくわかった。
胸の奥がチクリと痛みを感じて奥歯を噛み締め、直樹から視線をずらす。
直樹がこんな馬鹿げたオーディションに参加するなんて思っていなかった。

直樹ならきっと、友達オーディションなんてと、鼻で笑ってあしらうと思っていたのに。
それが、こうして参加しているのだから、椎名の近くにいたいと思っているんだろう。

胸がジクジクと痛む中、椎名が教卓の前に立った。

そして黒板に赤いチョークで《友達オーディション》と書いていく。
その文字に歓声が湧き上がり、拍手が聞こえてくる。
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