友達オーディション
「こっちの質問にはちゃんと答えてくれるし、いい香水の匂いがしてたぞ」
今度は英明が答える。

そう言えば椎名が歩いた後にはいい香りがしていたっけ。
「香水、なに使ってるのか聞いたぁ?」

「まだ。色々聞きたいことがあって、忘れちゃったんだよね」
「でもいいなぁ。会話できてぇ……」

千佳は本当に羨ましそうだ。
これから1年間以上一緒にいられるのだから、チャンスはまだあるのに。

とはいえ、この人気ぶりじゃまだしばらく話しかけるのは無理そうだ。
チラリと椎名の机に視線を送ってそう考える。

椎名の机の周りには相変わらずクラスメートたちが集まっていて、椎名の姿が見えないくらいだ。
廊下には美人転校生の噂を聞きつけた他のクラスや他の学年の生徒たちまで集まってきている。
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