友達オーディション
自分と同じようなタイプの重人をほっておけないのだろう。
直樹へ視線を向けると、英明に続いて重人を追い越すところだった。

英明のように力強さはないけれど、確実に少しずつ前へ進んでいる。
その額には汗が滲んでいて、歯を食いしばっているのがわかった。

私は自然と拳を握りしめて息を詰めてその光景を見つめていた。
頑張れ!

頑張れ直樹!
心の中で何度も何度もエールを送る。
10分間という短いようで長い時間がジリジリと過ぎていく。

「残り5分だよ」
椎名が男子生徒3人へ声をかける。

が、誰もそれに答える余裕はなかった。
3人が飛んで着地する音と、呼吸音だけが聞こえてくる

直樹の額に滲んだ汗が床に落ちてシミを作り、すぐに消えていく。
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