友達オーディション
今自分が何周したのかもわからないし、誰を追い越して、誰に追い越されたのかもわからなくなる。

ただ止まらずにマイペースに前に進むことしか考えられなくなってくる。
吸い込む空気はとても甘い。
甘くて甘くて胸焼けがしてくる。

それでも止まらない。
なんだかわからないけれど、止まれない。

「残り3分」
椎名へ視線を向けると、その顔には満足そうな笑みが張り付いていた。

本物香どうかわからない、整いすぎた笑み。
私はこれが好きじゃないはずだ。

それなのに今、その笑みのためにこんなことをしている。
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