貴方が此処に居るから
「もし本当に、私の考えが間違いなら構わないんだけど。万が一、美綺の表面的な感情の方が、美綺自身の深層心理に嘘を吐いているなら。」
楓は一回、目を閉じてから、また開いて言葉を続けた。
「美綺は一刻も速く、美綺自身の深層心理に気付いた方が良いと思うよ。出来るなら、12月の中頃までに。じゃないと、美綺は大切なモノを失くしちゃうよ。」
「……大切なモノ?」
「うん、失くしてしまったら、美綺は後で苦しくなるかも。」
あたしは少し、考えた。
取り敢えず、楓の言いたい事は何となく分かった。
今居る此処が学内だからか、周りの人に伝わらないように、わざわざ婉曲して言ってくれてる。
しかし、あたし自身が、あたしの心に嘘を吐いてる?
あたしは自覚が無いのに?
もし本当に、あたし自身に嘘を吐いてるなら、一体何の為に?
.