貴方が此処に居るから



嘘だ。
本当は、華ちゃんのお父さんだけ単身赴任する事も出来た筈。

…それをしなかったのは、華ちゃんが此処を離れる必要が有るから…。
華ちゃんが、此処に居るのが辛いから…。





「転勤先、九州なんだって。会うの難しくなっちゃうね。」

「華ちゃん…。」

「ごめんね、美綺。メールするから。」




行かないで。
此処に居て。
あたし、寂しいよ。

…言えなかった。
華ちゃんが自分で選んだ道だから。
華ちゃんが、自分に良かれと思って決めた事だから。







華ちゃんはそのまま、一人で帰ってしまった。
華ちゃんが、あたし達の学校に来る事は、二度となかった。



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