不純異性交遊禁止。
顔を両手で(おお)う。
恥ずかしい。
壱さんは、何も話さない。
わたしが変なことを言ったから、呆れてしまったのでしょうか。

指のすき間から、目をのぞかせる。
そこには、口を隠すようにこぶしを当てて、少し赤くなった壱さんがいた。

額を当てた時には気が付かなかったけれど、熱があるのは壱さんのほう?

「くそ……。聖良のそれ、うつった」

「え? ど、どれでしょうか?」

頭の上にハテナを浮かべているわたしに、壱さんが何も言わずに手を握る。

「えっ、えっ?」

「すればいいじゃん。聖良も、こういうの」

戸惑うわたしに、壱さんが恋愛小説を指さす。

「俺が、体験させてやる。おいで」

「──っ!?」

グイッと手を引かれ、風が頬を撫でた。
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