不純異性交遊禁止。
はあ。ドキドキした。
胸に手を当てて、深く息を吐く。

つないでいる手が汗ばんでいる気がして、少し気まずい。
気持ち悪いと思われていないといいんですが。

学校から離れると、お店が建ち並んでいて賑わっている街がある。
わたしは、ここを自分の意思で歩いたことがない。
いつも、決められたところまで車に乗って、人に誘導されて移動して、余計なことは一切せずに帰宅。
通学と同じ。
お友達とプライベートで会う時にも、お互いの自宅へ送迎されて、行き来するだけだし。

「どうする? 聖良。カフェにでも入る? 昼前だし、俺ちょっと腹減っちゃった」

壱さんが指をさすのは、テラス席もあるオープンカフェ。
ガラス張りになっていて、店内の様子が見える。

「カフェ……。あ、でも、わたし、今お財布を持っていなくて」

「それくらいおごるし。デートなんだからさ」
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