不純異性交遊禁止。

授業が終わり、誰にも見つからないように、とある場所を目指す。

コソコソと身を隠しながら、たどり着いたのは、裏庭へ続く扉。

開いてしまえばそこは、わたしだけのひみつの空間になる。

裏庭には高い塀があり、すぐ向こう側には、海堂学園がある。

先生方から、海堂学園には近づいてはいけないと、常日頃きつく言い聞かせられているから、この裏庭に近づく生徒は他に誰もいない。

近づいたところで、この高い塀を越えることは、雪平学院の女子生徒はもちろん、海堂学園の男子生徒でも無理だろうけど。

「ふふ、続きが楽しみ」

裏庭の芝生の上に座って、わたしは教科書の間に隠した文庫本を開く。

一日のうちで、いちばんの楽しみ。
それは、少女向けの恋愛小説を読むこと。

普通の女の子がクラスメイトの男子に恋をして、色んな障害を乗り越えて、幸せになるまでの物語。
お話が進む過程で、ちょっとエッチな展開になってみたり、新キャラの男子がグイグイ迫ってきたり、そこにはわたしには縁遠かったドキドキするストーリーが広がっている。

こんな本を持っているなんて知られたら、「はしたない」って、怒られてしまう。
お友達にも、話せない。

人の目がないこの裏庭でこっそりと読書をするのが、わたしの日課になっていた。
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