不純異性交遊禁止。
近づくことすら禁じられている海堂学園の男子を、学院の敷地内に入れる……!?
そんなことを、わたしが?

「頼むよ」

手を取り、ギュッと握られて、心臓が口から飛び出そうになる。

「うんって言わないと、離してあげないよ」

「ひえぇ……っ!?」

ご、強引!
現実の男の子って、みんなこうなの!?
パニックになる頭で、わたしはつい、コクンとうなずいてしまった。

──キーンコーンカーンコーン……。

学院の鐘が鳴る。
はじまりを告げるように。

「あんた、名前は? 何年生?」

「せ、聖良……。卯月 聖良、二年生です」

「俺も、二年。佐伯 壱(さえき いち)。壱でいいよ」

「い、壱さん?」

壱さんが、わたしの手を離す。

「またな、聖良」

そう言って、壱さんはひょいっと軽々塀を越えていく。

完全に、キャパオーバーです。
結婚前なのに、初対面の男性に手を握られました。

ふっとうしそうな頭で、芝生の上にバタンと倒れたわたしは、この日初めて授業を無断欠席しました。
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