チート幼なじみの真也くんは甘過ぎるのに見えません!

真也くんがお試しの恋人!?

〇翌日・学校・廊下

うきうきの真也が寝不足顔のひまりの手をつないで歩いている。
周りはざわつく。

ひまり(ぜんっぜん眠れなかった……!! し、真也くんとキスとか、今も手……っ)
真也「ねえ、ひまり。今日は帰りデートしようか。どこいく? あ、駅前にひまりの好きそうな猫のケーキ売ってるカフェできてたよ」
ひまり「あ~……えっと、うん。ひとのいないところがいい、かな?(目立つの怖い)」
真也「それって……」

目を輝かせる真也。


〇真也の家・真也の部屋(放課後)

ドドン、とゴージャスで広すぎる洋風な豪邸。
にっこにこの真也と困惑顔のひまりがふたりで並んで正座している。

ひまり(なんでこうなったの)
真也「まさかふたりっきりになりたいなんて」
ひまり「なんかこう、ちょっと違う気がするな……」

どきどきして思わずスススッと距離をとってしまうひまり。
真也がどこからとなく漫画を取り出す。

真也「なんとここに《赤いリボン》特装版があります」
ひまり「ありがとうございます!」

魚を貰った猫のように飛びつくひまり。
わーい、と真也の横にちょこんと座って読み始める。
クッションを用意してひまりが快適に読書出来るよう整え、ひまりを見つめて嬉しそうにしている真也。

数十分後、ひまりがハッと顔をあげる。

ひまり「ご、ごめんね。これ私は楽しいけど真也くんは楽しくないよね……」
真也「ひまりが楽しそうに読んでるの見れるから楽しいよ」
ひまり「なにそれ」

また冗談言って、と笑う。

真也「冗談じゃないんだけど……あ、まだお茶も出してなかったね」
ひまり「あ、お構いなく。突然来ちゃったし……」
真也「ひまりが好きそうな白桃烏龍もあるんだ。あとクッキーも」

うきうきとお茶の準備のため部屋をでていく真也。
残された部屋を改めて見渡す。

ひまり(おうちは豪邸!って感じだけど真也くんの部屋は必要最小限って感じ……)

ぎゅっとクッションを抱きしめるひまり。これも真也が用意してくれたんだな、と考える。

ひまり(わ……っ、なんか改めて意識しちゃうとこの部屋真也くんの匂いでいっぱい……)

どきどきしてしまう。

――ガチャ

真也「お待たせひまり。これ昨日の夜焼いたクッキーなんだけど――」

トレーにクッキーとお茶を乗せてもどってきた真也。
クッションに顔を埋めてちょっと照れているひまりをみて赤面する。

真也「そ、それはずるいって」
真也(可愛すぎる……)
ひまり「えっ、あっ、ごめん汗掻いてるかもしれないのに顔埋めちゃって」
真也「それは全然大丈夫むしろご褒美だから」
ひまり「え?」
真也「え?」

真也の部屋で並んでお茶を飲むふたり。

ひまり「美味しいっ」
真也「よかった。クッキーもどうぞ」
ひまり「ありがとう! ん~これもおいしいっ」

もぐもぐ食べておいしい~とご機嫌なひまり。
真也ひまりの顔を覗き込む。

真也「元気そうでよかった。今日は糸苦しくなかった?」
ひまり「んっ!」
喉にクッキーを詰まらせそうになってゴホゴホする。
真也「だ、大丈夫?」
ひまり「大丈夫……だけど、あのさっ、昨日聞きそびれちゃったけど、その糸って……」

どうして知ってるのと真也を不安げに見る。

真也「ん? あ、覚えてない?」
ひまり「な、なにを?」
真也「幼稚園のとき、ひまりが教えてくれたんだよ。自分には運命の糸が見えるって」
ひまり「――え?」

覚えていないひまり。そういえば幼稚園の頃の記憶があまりないことを思い出す。
真也もそれを察してそれ以上は言わない。

真也「……俺はひまりに助けて貰ったんだ。それからひまりは俺にとって神様みたいな存在ってわけ」

雑にまとめられて拍子抜けのひまり。

ひまり「ごめんね覚えてなくて……でも、そっか」
ひまり(知っていてくれる人がいるって……それだけですごく安心する)

ひまりが愛しそうな、安心したような表情をする。
ギシッと真也がひまりと距離をつめる。

真也「最初に言えばよかったね。俺が急に糸っていうから驚かしたよね」
ひまり「ううん……私が覚えてなかったから……」

近づいた真也に気づき「ん?」と見上げる。

真也「……無防備過ぎ」
ひまり「――え?」

真也がひまりにキスをする。驚いて手で胸を押そうとすると後頭部を手で押さえられてさらに深いキスになっていく。

ひまり「……っ、んっ」
ひまり(なに! なにこれ! ど、どうすればいいのっ、な、なんかえっちだしっ)

頭と視界がぐるぐるしてしまうひまり。
頭を抑えている手をゆるりと下へ滑らせ項を指先で擽る真也。

ひまり「ひゃっ……もっ、やだっ」

びくっと肩が震える。
ひまりが生理的な反応で真也の胸を再度押し返すと真也は素直に唇を離す。
ひまりは肩で息をしている。

真也「ごめん。ひまりが嫌がることはしないから」
ひまり「……っ、いけど……」
真也「ん?」
ひまり「嫌じゃないけど……びっくりした……」
真也「……そっか」

嬉しそうな真也。

ひまり「……し、真也くんの方はどうなのっ、昨日からこんなふうにキス、して」
真也「すっごく幸せ。こうさ、頭が溶けそうっていうのかな。じわーって多幸感で胸がいっぱいになる」
ひまり「なるほど……」
オタク視点で頷いているひまり。
ひまり(真也くん、キスすきなんだなあ。告白避けのわたし相手にもこれだけ……これがキス魔ってやつかあ……)
真也「ひまりは?」
ひまり「えっ」
真也「俺にだけ言わせて教えてくれないの?」

わざとらしく拗ねた顔をする真也。

ひまり(勝手に詳しく言ったくせに!)
ひまり「あ……うーん……えっと……その、唇って柔らかいんだなって……あとちょっとだけ気持ちいいなって……」

恥ずかしさから尻すぼみになる声。ぷしゅーっと頭から湯気がでそうになっている。

真也「……だからっ、ひまりはそういうところがずるい……!」

釣られて赤くなる真也。
んあっと再度キスしようとする真也。ひまりが腕で顔を隠して止める。

ひまり「だ、だめっ……」
真也「なんで。もう何回もしたじゃん」
ひまり「唇取れちゃうよ……!」
真也「数回じゃ取れないよ。それに取れたとしても愛せる自信あるし」
ひまり「やだよ! こわいよ!」

ひまりの抵抗も虚しくぶちゅーっとキスをされる。
いつの間にか押し倒される体制になっている。軽くはだけた制服。

真也「あー……もう、ひまりかわいい……」
ひまり「そういうこと言うのやめて……っ、キスばっかり」

半泣きで目をそらすひまり。ぐっとなにかを堪えるような顔をする真也。

真也「だってキスしているときのひまり、今までで一番可愛いんだもん」
ひまり「こ、恋人同士ってキスだけじゃないでしょ!? もっとこう、お互いを知ったりとか!」

はだけたシャツをピシッと直しながら勢いのままいうひまり。
うん、と納得したような真也。

真也「確かに」


〇真也の家・真也の部屋(数十分後)

アルバムをみているふたり。
幼稚園の頃のふたりが写っている。

ひまり「わあっ、この頃の真也くんかわいい」
ひまり(天使みたいなかわいさ……儚げで面影がないんですが?)
真也「ひまりは今も昔も最高にかわいいよ」
ひまり(またそういうこという……! 恥ずかしくてちゃんと見れないよ!)
真也「あ、みて。これお遊戯会のだ。ひまりかっわいいなあ……」

王子様の格好をした真也と町娘の格好をしたひまりの写真。

ひまり「あはは、懐かしい」
ひまり(モブと主人公にしか見えない……)

パラッと次のページをめくると現れた写真にひまりが目を見張る。

ひまり「あ……」

そこには幼稚園の頃のひまりと真也が描いた絵を持つ姿と寄り添う互いの両親が写っている。
不安げな表情に変わったひまりに気づき、真也がその上に別のアルバムを置く。

真也「これさ、ニューヨークに留学していたときのなんだけど見て。このオリバーってやつが本当に面白くてさ……」

ひまり(気を遣ってくれたんだ……)

と申し訳ない気持ちになる。それと同時に優しさを嬉しく感じる。
真也の写真をみて、ふと今より格好が派手だなと思う。

ひまり「意外。真也くんこんな服も着るんだね。すごくシックで素敵だけど」
真也「あー……向こうの流行、みたいなものかな。たしかに日本より派手に見えるかも」

派手なのに洗練されてて素敵だな、と思う。
写真の真也がピアスを着けていることに気づき、隣の真也にぐいっと顔を近づける。

ひまり「あ……ピアスの穴がある。軟骨も開けてるんだ」

至近距離でハッと目が合う。一瞬停止するふたり。

真也「だから……ずるいって」

ゆっくりと真也からキスをする。ひまりもそれを受け入れる。

ひまり「っ……はっ……」

角度を変えて何度かキス。クッションを握っていた指に真也の手が重なり絡み合う。
唇を離して真也が頬、額、とキスを落としていく。

真也「ね……今日、泊まっていきなよ」
ひまり「……えっ」

真也が首筋にキスをする。

真也「昔はよくうちに泊まりにきてたじゃん」
ひまり「それって幼稚園の話……っ」
ひまり(お泊まりってそういうことだよね!? この状況だし!? 展開が、展開が早すぎるよ……!!)
真也「……嫌?」
ひまり「い、嫌とかじゃ……ないけど……っ、わたし、まだっ……」
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