華ちゃんとまた花火が見たいよ
別れ

 翔はグアム赴任から五月が過ぎて日本に一時帰国した。

 東京本社で仕事をしていたが、休みの日に枚方に帰ってきた。

 用事はなかったがサンチョパンサ枚方店に寄った。

 華ちゃんは見当たらなかった。

 店長に会った。

「華ちゃんは休みですか?」

「聞いてなかったんか」店長はため息をついた。そして歯切れ悪くしゃべった。

「華は先月、亡くなった。ここに働きに来る前から末期の癌やった。治療で大学留年したけど、もうどうにもならへんみたいで治療やめてた」

 翔は愕然とした。

「そんな、そんなひどいこと」

「働かんと療養しぃと言ったけど、小谷さんと少しでも一緒にいたいって、こうと思ったら、言う事聞かんやつでな。小さい時からそうやった」

「ちいさい時?」

「あ、華は僕の姪なんや」

「そうですか」

 翔は勘違いしていたんだとわかった。不倫かと思ってた自分を情けなく思った。

 華ちゃんの家を教えてもらって焼香しに行った。

 華ちゃんの遺影はいつもの笑顔だった。泣きそうになった。

 華ちゃんのお母さんは教えてくれた。

「華はあなたの事がとっても好きやて話してくれた。そばにいるだけでええねんと言っていた。でも仲が良くなってきた時、吐血して入院した。それで、仲良くなったらあかんと思ったみたい。でも花火に連れてってもらった日の事を何度も話してました。幸せやったと思う」

 僕は鈍感な事をとても後悔した。

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