華ちゃんとまた花火が見たいよ


 また、目があった。翔さんも意識してるのかなぁ

 華は文具コーナーの補充をしながらチラチラ翔を見ていた。

 なんかワクワクする。この店に買い物に来て、翔さんを見てすぐにわかった。

中学生の時、変なおっさんに絡まれたのを助けてくれた人や。

 翔さんは私のヒーローやで。だからこの店にバイトに来た。

 翔さんはなんも気付いてないみたい、大学生 になってコンタクトに変えたし、少し化粧もしているからわからへんか。もともとそんな事を覚えてないか。

 あの時、「元気出して」ってくれたちっちゃいクマのぬいぐるみ、まだ、持ってるで。

 余命が半年なのにアルバイト始めたんは、翔さんと話がしたかったからや。

 病気になる前に知り合いたかった。でも、会えるだけで嬉しい。

 食事に誘われた。めっちゃ楽しみ。どんな服装でいったらええかな。

 華は吐血した。

 出血部位の手術をした。しばらく入院になった。退院して自宅療養した。

 どうせ治るわけじゃないし、バイトまたやりたい。翔さんに逢いたい。

 逢いたいけど、付き合うのはやめよう。翔さんを傷つけたくない。

 わざと冷たくするのってつらい。なにしてんねやろと思う。

 体がきつい。迷惑かけたらあかんけど、もう少し翔さんと一緒に働きたい。

 店長に、実は叔父さんやけど、ぼちぼちやめて治療に専念したらと言われた。

 でも治らへんね。もう少し翔さんのそばにいたい。

 翔さんは正社員になってグアムに行くことになった。

 もう会えなくなる。日本に帰ってくる頃には、もう私はいない。

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