司法書士は看護学生に翻弄される
優菜は、納得してくれたんだ、とホッと胸を撫で下ろした。
「君は成人しているし、自分の身の置き場は自分で考える事に、もちろん誰も口出しはできない。君がそう決めたのならばいいと思います。ただ忠告だけさせてもらってもいいかな?今後発生するかもしれない事に関して、注意点を僕の視点から言わせてほしい」
林さんは穏やかに優菜に説明する。
「愛人になるということは本妻さんがいるということだよね。ならば君は不倫相手になる。しかも妻がいると知って関係を結ぶ場合、本妻から慰謝料請求されるかもしれないよ。金額的には100万から200万が相場平均だ。大損だよね」
林さんはノートパソコン持ってきてダイニングテーブルの上置きタイプし始めた。
「相手の男は、それは心配ない妻も公認だ。なんていう場合もあるんだけれど信用できるかどうかは僕には分からない。契約書作った方がいい。もしかしたら撮影されたり、変なプレーを強要されたりするかもしれないからね」
優菜の顔色が一気に青くなる。
中谷さんが変態だったらどうしよう。監禁されたりする可能性もあるかもしれない……怖い。
「給金は前払いにしてもらって、じゃないと、やり逃げっていう場合もありえるし、後でケチられても困るからね。体の相性が悪かったから、とかで逃げられたり。まぁ、こういう事にはよくある事例だよね、変な病気を移されたり」
そういえば中谷さんがどんな仕事をしているのかはっきり知らない。今までどんな愛人を持っていたのか、優菜に与えてくれるマンションの場所や間取りなんかも……聞いたことがない。
ただ過去に1日に20万円のボトルを入れてくれたこともあり、お金持ちなのは確かだと思う。
この話がなくなったとすれば、途端に私は住む場所がなくなる。明日からどうやって生活していけばいいのかが分からない。このままアパートを追い出されたらネットカフェに住むことになるのか。
ウィークリーマンションを借りられるだけのお金なんてないし。
優菜は林さんの言っている事の正当性を考えた。そして万策尽きたと俯いた。