司法書士は看護学生に翻弄される
「少し話そうか……」
そう言うとベッドの端に腰かけて、林さんは手招きをする。
優菜はちょこんと林さんの横に腰かけた。
スマートな彼は背が高いので横に座ると見上げるように話をしなければならなかった。
「あのね、君はまだ恋とか知らないだろうからあれなんだろうけど。好きな男の人ができたら、その相手になる男性は、君が他の男性と体の関係を簡単に持っていたことを良しとはしないと思う」
「……」
「もし、住む場所を提供した僕に対して、申し訳ないとかお礼のつもりだとかで体を差し出そうとしているのなら、それは必要ない。前も言ったかもしれないけど、自分をもっと大事にしてほしいなと思う」
「嫌ではないです。無理やりとかでもないです。林さんに喜んでもらいたいなと思う気持ちなんですが。やっぱり駄目ですよね……」
「駄目とかそういうんじゃなくて、君と僕は親子ほど年が離れてるよね。僕は38歳だ、おっさんだよ」
「そこまでおっさんでもないです」
ははっと笑った。林さんの笑顔は少年っぽい。
「僕はすごくうれしいけど、君は……若すぎる」
林さんは苦笑いをした。
「昨夜は君の初めてを奪ってしまって本当に申し訳なかった。罪悪感もかなりある。昨日はまぁそう、知らなかったから……痛かったよね?」
全く痛くなかったというのは嘘だ。けれど、相手が林さんなら我慢できると思った。
「昨日はそうですね。なので連日痛い思いはしたくないですし、できればこれからもそういう行為は、いわゆるなんていうか痛いので誰ともしたくないかもです。でも、林さんになら我慢はできると思います」
林さんは頭を抱えて、うぅ……とうなり声を上げた。
「とにかく今日は無理だから。ごめん部屋に戻ってくれる?いや、すまない引き止めたのは僕だった」
林さんはそう言うと、今度は優菜を部屋まで送ってくれた。そしてクロゼットから布団を出して、布団でも眠れるよね?ベッドの方がいいとかある?と訊いてきた。
大丈夫ですと答えると、おやすみと言って優菜の部屋から出ていった。
ベッドがいいと言えば、きっと彼はベッドを優菜にけ渡し、自分が布団をひいてそこに寝るだろうと思った。