司法書士は看護学生に翻弄される
「君が看護師になったら、病院の社員寮に入ると言っていたけれど、このままここに住んでくれても構わないし、寮に入ってもらっても構わない。契約は半年だったから君は好きなように自分のやりたいことを選んでくれたらいい」
唖然としてしまった。まさか、あの契約がまだ有効だったとは思ってもいなかった。
「もちろん、今まで通りこのマンションで一緒に住んでくれたら僕は嬉しいけど、若い君をここに閉じ込めておくのは忍びない……」
林さんの表情が読めない。彼は淡々と事務的に話をしている。私を追い出すつもりなのか、頭の中がいっぱいになる。
「……すみません。ちょっとまた気分が悪く……」
優菜は口を押さえてトイレに駆け込む。あまりのショックに吐き気が襲ってきた。
「大丈夫?ごめんね。君の体調も考えないでこんな話をして。少しベッドで横になっていた方がいい」
林さんはそう言うと優奈をベッドに連れていき寝かしつけた。
眠ろうにも眠れたものではない。さっき林さんが言った言葉を理解しようとしても、なかなかすんなり頭に入ってこない。
契約は一体どういうものだったのか確認しなくてはいけない。
確か、半年間このマンションに住んでもいい。住み込みの家政婦として。そして看護師になったらここから出て行って、今まで借りたぶんのお金を全て林さんに返済するという内容だったはずだ。
……生きていたんだ……契約は生きている。