司法書士は看護学生に翻弄される


9月の終わり、朝陽が退院した。まだ2000グラムの小さな赤ちゃんだった。膜がかかったような目がくりくり動く様子は、ずっと見ていても飽きなかった。
夜泣きも少なくミルクもたくさん飲んでくれた。

弥生さんが2時間おきに様子を見に来るし、兄もすぐに抱っこしようとするから、朝陽は昼間寝ている暇がないのかもしれない。

その夜『今夜8時から東の空を見て』とラインがあった。教習所で知り合った花火の男性からだった。
山本太一というその花火イケメンは、優菜より早く教習所を卒業していった。

朝陽の退院を花火でお祝いできる。東の空を見上げ、素敵な夜になったなと少し涙ぐんだ。


山本さんとは、教習所を卒業してからもたまに連絡があるライン友達のようになっていた。彼はいろいろ忙しいらしく、なかなか教習所に行ける時間がなく、教習所に9ヶ月も通っていたらしかった。
『やっと取れた運転免許だからきっと他の誰よりも嬉しい』
というラインに、おめでとう!と返信しながら、免許取得に9ヶ月かかった人の助手席に乗るのは怖いだろうなと優菜は思った。


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