司法書士は看護学生に翻弄される
和室の布団で自分もうとうとしている時に玄関のドアがガチャリと開く音がした。林さんが帰宅したんだなと思ってそっと布団から抜け出した。
「すまない遅くなった」
林さんはそう謝ると、食事は事務所で食べたからと言ってシャワーを浴びにバスルームへ向かった。
素面では話がしづらい気がして、冷蔵庫にあった卵やチーズ竹輪などで簡単なあてを作りテーブルに置いた。
浴室から戻ってきた林さんはスエットとシャツ姿で濡れた髪が色っぽかった。
「ああ、作ってくれたんだね。お酒飲む?」
「はい。勝手にいろいろ漁りました。ワインとビールがありました」
ははっと笑うと自分にはビールを、そして優菜にはワインをグラスに入れて持ってきてくれた。
「君はワインが好きだった」
渡されたものを乾杯もせずにグイっと一気に飲んだ。
「無理やり連れてこられたのにも怒ってますけど、朝陽の父親だっていう事を私に話してくれなかったことに一番腹が立ってます」
林さんはソファーに腰かけて今までのいきさつを話してくれるだろうと身構えた。
彼は優菜の腰に手を置いて自分の方へと引き寄せた。
「触られるのは嫌?」
今までにない至近距離で訊かれる。
「……嫌……じゃないです」
嫌ではなかった。全く嫌じゃない。けれど今はそういう事をする時ではない。
「思い出せない?僕の事」
優菜は頷いた。思い出せない事に苛立ちを感じる。なんで思い出せないのかが解らない。
「君が僕を思い出すまで、待ってたんだ。でも悲しい事に……」
林さんは優菜を抱き寄せて首筋にくすぐったいキスをする。
「ちょっと待って下さい。思い出せないのは本当にごめんなさい。でも私もどうしてなのかわからない」
林さんとの距離を取ろうと彼の胸を軽く押した。
「キスは嫌?」
「嫌じゃないですけど、そういう事は話した後で今じゃ…………うっつ……」
あっという間に林さんは優菜の首を引き寄せて唇を合わせてきた。
それはだんだん深くなり、彼の熱い舌が唇を割って中に入ってくる。
「ちょっと、あっ……」
顔中にキスの雨が降ってきて林さんは優菜の身体をソファに押し倒した。