『ル・リアン』 ~新編集版~
 翌朝、自分の唸り声で目が覚めると、声がガラガラで、喉がカラカラに乾いていた。
 笑美が水を運んできてくれたが、起き上がることができなかった。
 頭がガンガンするだけでなく、グルグルと回っているようなヤバイ状態になっていた。
 なんとか水を飲んでもう一度横になると、自分は知る由もなかったが、すぐにイビキをかき出したらしい。

 暫らく眠ったあと、笑美に起こされた。
 成田へ行く時間が迫っているというので服を着替えることもできず、歯を磨いて顔を洗って髪を整えて慌ててホテルを飛び出した。
 
 悪友の企みによって初夜を台無しにしてしまったが、その後は元気になって新婚旅行を楽しんだ。
 パリ、ウイーン、ローマとヨーロッパを10日間巡ったのだ。
 パリではルーブル美術館とベルサイユ宮殿に、ウイーンではシェーンブルン宮殿とホーフブルク王宮に、ローマやバチカンではサン・ピエトロ大聖堂とバチカン博物館に足を運んだ。

 歴史的な建造物の美しさはもちろんのこと、所蔵されている美術品の素晴らしさに圧倒されて何時間も動けなくなった。
 アメリカとはまったく違う歴史と芸術の重みに圧倒された。
 それだけではなかった。
 日本とアメリカしか頭になかった未来設計図にヨーロッパが加わったことは大きな収穫だった。
 それによって、日米欧3極での新薬開発を夢見るようになった。
 それは、将来の社長候補としてとても意味のあることだった。

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