『ル・リアン』 ~絆、それは奇跡を生み出す力!~  【新編集版】
 3学期に入って入試まで1年を切るようになると、同級生とカラオケに行くことはなくなった。
 だから、ビフォー&アフターの曲に接することもなくなった。
 そのせいもあって、そのことを思い出すことはほとんどなくなった。

 そんなある日曜日の午後、部屋で勉強をしていると、リビングの電話が鳴った。
 両親は出かけていたし、友達が家の電話に掛けてくることはないので放っておいたが、呼び出し音は10回を超えても鳴り止まなかった。
 面倒くさいな、と思いながらもリビングへ行って受話器を取った。

「もしもし」

「えっ、あっ、御無沙汰しています。最上ですが、スナッチはいますか?」

「スナッチ……」

「あっ、すみません。奥さんじゃなかった、もしかして、娘さん?」

「はい、そうですけど」

「失礼しました。お父さんの幼なじみの最上と言います。お父さんに代わってもらえますか?」

 今外出中であることを伝えて受話器を置いたが、その途端、力が抜けた。
 へなへなとフローリングにへたり込んでしてしまった。

 やっぱりスナッチだったんだ、

 思わず声が出て、しばらくそのまま動けないでいたが、部屋に戻ると何故か可笑しくなってきた。
 すると、志望校に関する悩みが嘘のように消えた。
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