『ル・リアン』 ~絆、それは奇跡を生み出す力!~  【新編集版】
 八方塞がりになって、どうしようもできなくなった最上は、気分転換をするために散歩がてらポトマック河畔に出かけた。
 
 快晴だった。
 そして、美しい花が盛りを迎えていた。
 その美しい花は、桜。
 日本から移植された桜が満開だった。
 1912年にたった2本植樹された桜苗木が大きく育つと共に、その後も日本から寄贈が続けられ、その数は今では3,500本を超えているという。
 日本でも見たことがないような見事な桜並木が目を釘づけにした。

 ポトマック公園では全米桜祭りが1か月間に渡って開催され、この日はマーチングバンドの演奏に合わせてチアリーダーたちが見事な踊りを披露していた。
 そして、日本食のブースに大勢のアメリカ人が列を作り、鮨やラーメン、焼きそばやお好み焼きなどに舌鼓を打っていた。
 家族連れも恋人たちも皆楽しそうな笑みを浮かべていた。
 それを見て、心が癒されていった。
 そのせいか、
「桜と日本食か~、やっぱり最高だよな」と思わず独り言ちてしまった。
 そんなにお腹が空いているわけではなかったが、郷愁に誘われて無性に食べたくなった。
 アメリカ人の列に並んで、お好み焼きを買い、河畔のベンチで味わった。

 広島風お好み焼きだった。
 キャベツ、もやし、豚肉、卵、そして、なんと言っても焼きそば麺。
 それに、このソースの旨いこと。
 笑顔の和風美人がシンボルマークとなったこのソースのまろやかな甘さが味蕾を刺激し、今アメリカに居ることを一瞬忘れてしまいそうになるくらいの口福に満たされた。

 あ~、幸せ。

 また独り言ちた。

 心が温かくなった最上は、川面に映る桜を見つめながら愛妻・笑美の顔を思い浮かべた。
 すると、「大丈夫、きっとうまくいくわよ」と笑美の声が聞こえたような気がした。
 そうだね、大丈夫だよね。
 頷きながらまた独り言ちた。

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