『ル・リアン』 ~絆、それは奇跡を生み出す力!~ 【新編集版】
びっくりすることが起こった。
定期異動時期ではないにもかかわらず異動辞令が発せられたのだ。
会社も危機感を持っていたからだろうか?
それはよくわからないが、あっけなく希望が叶えられることになった。
販促部での引継ぎを済ませて意欲満々で企画部に赴任した。
自らの手で有望な新人を発掘できることにワクワクしながらドアを開けた。
しかし、部屋に入った瞬間、その乱雑さに驚いた。
余りの酷さに絶句した。
邦楽セクションの部屋はごみ屋敷としか思えなかった。
「整理整頓? そんなことしたら調子狂っちゃうよ」
前任者は、これが当然、というような顔をした。
「でも、どこに何があるのか、これではわからないですよね」
「わからなくていいんだよ。どうせほとんどはガラクタなんだから」
彼は肩をすくめて笑った。
ガラクタ……、
彼と話をするのを止めた。
「引継ぎは」と言いかけた彼を手で制して、
「結構です。わたしのやり方でやりますから」とはねつけた。
「そう。じゃあ、よろしく」
無表情で手を上げて部屋を出て行った彼の異動先は営業部だった。
それにしても、どうやって積み上げたのだろう?
前任者の技に思わず感心してしまった。
机の左側は書類の山だった。
右側は開封されていないデモテープの包みが積み上げられていた。
ちょっとでも触れると崩れそうなくらい高く積まれていて、椅子に座ると書類の山とデモテープの山に挟まれた谷間にいるように感じた。
思わず、バカじゃないの! と机に向かって吐き捨てたが、それでも気を取り直すために深呼吸をして立ち上がった。
先ずはラジカセを探さなくてはならない。
隣席の先輩に聞いて、部屋の奥からラジカセとヘッドフォンを持ってきた。
そして机の空間にラジカセを置いて、デモテープを一つ一つ聴き始めた。
ダメだな~、
5本ほど聴いて、思わず独り言ちた。
聴くに堪えないものばかりだった。
これじゃあ、誰だって聴かなくなる、
前任者のしらけた顔が思い浮かんだ。
しかし、ゴミの中から宝を探し出さなければならない。
そのためにここへ異動してきたのだ。
思い直して、また聴き続けた。
定期異動時期ではないにもかかわらず異動辞令が発せられたのだ。
会社も危機感を持っていたからだろうか?
それはよくわからないが、あっけなく希望が叶えられることになった。
販促部での引継ぎを済ませて意欲満々で企画部に赴任した。
自らの手で有望な新人を発掘できることにワクワクしながらドアを開けた。
しかし、部屋に入った瞬間、その乱雑さに驚いた。
余りの酷さに絶句した。
邦楽セクションの部屋はごみ屋敷としか思えなかった。
「整理整頓? そんなことしたら調子狂っちゃうよ」
前任者は、これが当然、というような顔をした。
「でも、どこに何があるのか、これではわからないですよね」
「わからなくていいんだよ。どうせほとんどはガラクタなんだから」
彼は肩をすくめて笑った。
ガラクタ……、
彼と話をするのを止めた。
「引継ぎは」と言いかけた彼を手で制して、
「結構です。わたしのやり方でやりますから」とはねつけた。
「そう。じゃあ、よろしく」
無表情で手を上げて部屋を出て行った彼の異動先は営業部だった。
それにしても、どうやって積み上げたのだろう?
前任者の技に思わず感心してしまった。
机の左側は書類の山だった。
右側は開封されていないデモテープの包みが積み上げられていた。
ちょっとでも触れると崩れそうなくらい高く積まれていて、椅子に座ると書類の山とデモテープの山に挟まれた谷間にいるように感じた。
思わず、バカじゃないの! と机に向かって吐き捨てたが、それでも気を取り直すために深呼吸をして立ち上がった。
先ずはラジカセを探さなくてはならない。
隣席の先輩に聞いて、部屋の奥からラジカセとヘッドフォンを持ってきた。
そして机の空間にラジカセを置いて、デモテープを一つ一つ聴き始めた。
ダメだな~、
5本ほど聴いて、思わず独り言ちた。
聴くに堪えないものばかりだった。
これじゃあ、誰だって聴かなくなる、
前任者のしらけた顔が思い浮かんだ。
しかし、ゴミの中から宝を探し出さなければならない。
そのためにここへ異動してきたのだ。
思い直して、また聴き続けた。