ツカノマ・サマー

(どのタイミングで目って閉じればいいの?)



頭の片隅で悩んでしまうけれど。

すぐにそんなことは考えられなくなった。



真夏くんの唇が。

私の唇にそっと触れる。



(私、キスしている……)



ずっと望んでいた。

大好きな人との。

こんな幸せな瞬間。



真夏くんの唇が少し離れて、
「こんな場所で良かったの?」
と、呟く。



「こんな場所って?」

「大切な初めてのキスなのに、こんな、何でもないオレの部屋で……、こんな雰囲気で……」



(そんなこと、心配しなくてもいいのに)



「私には、真夏くんとするキスに意味があるんだから」
と、正直に伝えた。



そう。

真夏くんとだったら、どんな場所でもどんな雰囲気でも、最高のものになるよ。




「好き、真夏くん」
と、伝えた。



真夏くんはもう一度唇を重ねてくれた。

そして、上唇だけ触れたままで、
「オレも好きだよ」
と、息だけの声で囁いてくれる。
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