ツカノマ・サマー
「あっ……、ご、ごめん!」
と、真夏くんが離れようとするから、私は焦った。
(やだ)
(離れていかないで)
そう思った。
真夏くんをぎゅっと抱きしめる。
「すみれちゃん?」
戸惑った声を聞いて、もっと焦った。
「真夏くん……」
真夏くんの顔が見たかった。
どうしても、顔を見て言いたかった。
「……キスしよう?」
言った。
言っちゃった。
真夏くんの顔が赤くなったような気がして。
私の心の中は、期待と不安で落ち着かなくなる。
「ま、真夏くん?」
「……すみれちゃん、もう帰ったほうがいいよ」
「えっ?」
真夏くんが起き上がり、私から離れた。
私も上体を起こす。
「もう子どもじゃないし、すみれちゃんはお仕事だってあるし、こんなの良くないよ」
「真夏くんは、どう思っているの?」
「え?」