ツカノマ・サマー
恋心と瞬間
ーーー遡ること、一日前。
つまり昨日のこと。
私は都内にある、私が所属している芸能事務所にいた。
マネージャーの福田 咲子さんが、
「ちょっとだけ髪の毛の長さ、切ったり出来る?」
と、私に聞いてくる。
この間正式に決まった、有名な映画監督の作品に参加する話の途中だった。
「ちょっとだけって、どのくらいですか?」
「もう五センチほど短いほうがいいって……」
それなら大丈夫だと思った。
極端に短くするのは抵抗があるけれど。
五センチくらいの長さなら、私にとっては、まぁ、許容範囲内だし、気分転換にもなる。
「大丈夫です」
と、返事すると、福田さんはスマートフォンを取り出し、美容院の予約をその場で済ませてくれた。
「一週間後、空き時間があるからそこで切るからね。それでイメージ通りか、一応確認してもらおう」
と、私に念を押す。
「あぁ、それと」
と、ついでのようにスマートフォンを片付けながら、私を見ずに続ける。