ツカノマ・サマー

脳裏に浮かんだのは、私がずっと片想いをし続けている真夏くんの顔だった。



真夏くんがいい。

大切な初めてのキスは。

真夏くん以外には考えられない。



(でも真夏くんとは、二年くらい会っていない)



忙しくて、会えていなかった。

この春から私、実家も出ちゃったから。

もうご近所さんでもないし……。



芸能界入りして、毎日がめまぐるしく過ぎていく中でも。

ずっと心の中には真夏くんがいた。

だから頑張っていられるのに。



……このままだと、私、真夏くん以外の人と初めてのキスをしなくちゃいけなくなる。



(それだけは絶対に嫌!)




真夏くんに会って、キスしなくちゃ。

そうだよ、真夏くんじゃないと嫌なんだもん。

こうなったら……!



(人生初めてのキスを捧げようじゃないの!!)




私は事務所のお手洗いに行き、個室に入り鍵をかけた。

スマートフォンを取り出し、連絡先アプリを起動させる。



「あの子なら、絶対に協力してくれる」



犬飼 小春。

その名前を見つけて、私は電話をかけた。
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