ツカノマ・サマー
「あっ……、ご、ごめん!」
と、真夏くんが離れようとするから、私は焦った。
焦って、床に倒れている密着状態のまま、咄嗟に真夏くんをぎゅっと抱きしめた。
「すみれちゃん?」
戸惑った声を聞いて、もっと焦った。
「真夏くん……」
私は真夏くんの体を抱きしめた腕の力を緩めて、真夏くんの顔を上目遣いで見上げる。
フローリングの床とぴったりくっついた背中に、じんわり汗の気配。
「……キスしよう?」
言った。
言っちゃった。
真夏くんの顔が赤くなったような気がして。
期待する気持ちと不安で仕方ない気持ちが、私の心の中でザラザラと混ざる。
……お願い。
どうか、拒まないで……!!
ーーー高野 すみれ。
十六歳の夏は。
束の間の、この三日間が全て……ーーー