ツカノマ・サマー
『……すみれちゃん?』
コール3回で、小春が出る。
「久しぶり。小春、黙って私の言うこと、聞いてくれるよね?」
『えっ!?』
小春の顔が引きつっているのが、簡単に想像出来る。
「真夏くんの大切にしていたあの花瓶、割ったことをずっと内緒にしてあげているのって、私だもんね?」
『うっ!』
「それとも小春が小学校五年生の時に、私の家で怪談話聞いた夜……」
私がまだ言い終わらない内に、
『なんでも言うこと聞きます!』
と、小春がハッキリと言った。
(ナイス!)
「だから小春って好き」
と、優しい口調で伝えると、
『私はすみれちゃんのこと、怖いよ……』
なんて小春は言って、でも笑ってくれた。
『で? 何をすればいいの?』
「真夏くんに会いたいんだ。どうしても」
『会えばいいんじゃん? でもお兄ちゃん、ひとり暮らししているから、もうここにはいないよ』
「えっ? そうなの?」
小春は『うん、この春から』と頷いて、
『住所、メッセージアプリで送ってあげる。すみれちゃんだったら教えても大丈夫だと思うし』
と、言ってくれた。