ツカノマ・サマー

そして。

ひと通りの打ち合わせを終えて、私のひとり暮らしの部屋に帰って来た。



まず手洗いうがいを済ませて。

キッチンへ行って冷蔵庫を開ける。



(なんにもない……)



あるのはミネラルウォーターが一本と、少ない種類の調味料、桃のゼリー。



桃のゼリーを取り出し、
(ナイスだな)
と、思った。



少しの間、真夏くんのところへ行っていても、冷蔵庫に腐るようなものなんか入ってないし。

そう考えると、空っぽに近い冷蔵庫に背中を押されているみたいな気持ちになった。



行って来なよ!

この部屋のことは大丈夫だよ!



「うん」
と、声に出して頷く。



「うん、行こう!」



ひとり、気合いを入れる。

桃のゼリーを食べつつ、スマートフォンの画面を操作して、真夏くんの住所を地図で見る。



(わかる。絶対に辿り着ける)



ひとまず今夜食べる物は何か買うか頼むかしよう。

明日、真夏くんに会いに行く。



そのために仕事はキャンセルする。
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