ツカノマ・サマー
ニッコリ笑って、
『面白そうな本だね』
と、言ってくれる真夏くん。
ビリッと体に何かの衝撃が走った気がした。
抱きしめられたみたいな形で、本を取ってもらったことにも。
その優しさにも。
笑いかけられたことにも。
私の感情は、ほんの少し浮き上がって、そわそわと落ち着かなくなっていた。
(恋心だ)
小学四年生の私は。
漫画でしか知らなかったその感情を。
すんなりと自分のものにした。
ずっと大切にしようって心に決めた。
真夏くんのこと。
……野菜サンドを食べ終わり、私は電車に乗って。
二年ぶりに真夏くんに会いに来た。
ーーー考え事をしていたら、真夏くんが私の顔を覗きこんだ。
真夏くんのひとり暮らしの部屋の中。
もう空は赤く、夕焼け空が広がっている。
「な、何?」
思わず自分の頬を触って確かめてしまう。
今、私、赤面してたらどうしよう。
「すみれちゃん、何度も呼んだのに返事がなかったから」
と、真夏くん。