ツカノマ・サマー
弾んだ心を、胸の奥にとどめておくことが難しくなっちゃうかも。
そう思うくらいに、嬉しくなった。
エプロンを受け取り、付けようとしたら。
確かにブカブカだった。
そのことに、ときめく。
真夏くんの物を、使わせてもらっていることにも。
真夏くんの物に、包まれている感覚にも。
ウエストの紐が長くてうまく結べないでいると、真夏くんがそっと「貸して」と言って、手際よく結んでくれた。
その時、ほんの少しの時間だけど。
真夏くんとの距離が縮まって。
抱きしめられているような気持ちになった。
恋に落ちた、あの瞬間を思い出して。
(真夏くんって、ずるいなぁ)
なんて思った。
私の恋心なんて、簡単に膨らましちゃうんだから。
真夏くんは手際よく調理して、あっという間にピラフを作ってくれた。
私はほとんど隣で見ているだけだった。
ローテーブルにピラフとスープを置いて、ふたりで「いただきます」を言う。
私がスプーンでピラフをすくい、口に運ぶのを、真夏くんは少し緊張した面持ちで見守っていた。