ツカノマ・サマー

「えっ? ここ以外にどこがあるの?」

「でも、すみれちゃんがこの部屋で寝るでしょ?」



(いやいや、真夏くん。それじゃあ私がここに来た意味がなくなるんだよ)




だけど、真夏くんらしいよねと思うと、誠実な良い人なんだなって改めて実感する。



「一緒にこの部屋で寝ようよ。私はそのつもりだったよ」

「えっ!?」

「真夏くんと同じ部屋がいいもん」

「……それは……、ちょっと」



このままでは、本当に部屋から出て行ってしまいそうな真夏くんの気配を感じて。

それでは目的も何も果たせない。



焦った結果、
「私、床で寝るから」
と、わざとほんの少し引き下がるような言い方をした。



「ダメだよ、そんなことさせられないよ」

「真夏くんはベッドで寝てね」

「それだったら、オレが床に寝るよ」



その言葉に、私は笑顔になる。



「同じ部屋にいてくれるなら、私はベッドでも床でも、どこでもいいよ」
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