ツカノマ・サマー

「すみれちゃん、役者さんになったんだよね?」

「そうだよ、観てくれてる? 私のこと」

「テレビで観ない日なんかないよ。でも、そんな人気者のすみれちゃんが、どうしてオレの部屋の前にいるの?」



私は笑顔を崩さず、
「とりあえず中に入れてよ」
と、玄関ドアを指差した。



「え?」

「ほら、アイスも溶けるし」



手に持っているショッキングピンク色のエコバッグを、ひょいっと少し持ち上げてみせる。



それでも真夏くんは、
「いや、でも部屋の中は……」
と、渋った。



「なんで?」

「ひとり暮らしの部屋だし……」

「部屋に恋人でも待っているの?」

「えっ!? まっ、待ってないよ!」



真夏くんが慌てた。



(……ナイス)



真夏くんのその反応で、恋人なんていないんだろうなって安心した。

ナイス。

非常にナイスな展開。



「ほら、外は暑いしさ。私、日焼けとかなるべく避けたいんだよね。話す間だけでもいいから、部屋に入れてよ」
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