ツカノマ・サマー
「それで、赤ちゃんのすみれちゃんを初めて見た時にね、なんて名前なの?って、おばさんに聞いたんだ」
「うん」
「すみれちゃんっていうんだよって聞いて、オレ、花と同じ名前のすみれちゃんに若干嫉妬したことを覚えているよ」
「えっ、嫉妬?」
「そう。いいなぁって、うらやましかった」
私はクスクス笑って、
「えー、可愛いね」
と言いつつ、なんとなく照れてしまった。
「……眠れそう?」
「わかんない」
私は手を伸ばして真夏くんにこう言った。
「手、握っててもいい?」
真夏くんは「いいよ」と言って、手を伸ばし、そっと私の手を握ってくれた。
大きくて。
ちょっとごつっとした、真夏くんの手。
(男の人の手だ)
私にとって、特別な手。
ずっと覚えていたい。
この手のぬくもり。
包まれている感覚。
今のこの気持ち。
温かい手のぬくもりに安心したのか、私はいつの間にか眠ってしまっていた。