ツカノマ・サマー

「わぁっ!」



真っ赤になる真夏くん。



「こら、すみれちゃんっ、ダメ!」

「えー、なんで!? 昨日だってハグして……」



真夏くんは首を振って、
「昨日は昨日! 今日は今日!」
と、訳のわからないことを言い出す。


少しムッとしてきたから、構わずぎゅうぎゅう抱きしめていると、
「あー、もうっ」
なんて上体を起こして、私のハグから逃げた。



「あんまり朝からドキドキさせないでよ」



真夏くんが、そう言った。

思わず、
「えっ?」
と、聞き返してしまった。



真夏くんが。

ドキドキ……?



嬉しくて。

頭の上にお花が飛んでいるんじゃないかと思った。



私がニヤニヤしていることに気づいたのか、珍しく真夏くんがむむっと表情を固くした。



「……朝ごはん、パンでもいい?」
なんて、むむっとした表情のままで聞いてくるから、余計に可愛く見える。



「いい! パンがいい!」



答えると、真夏くんは「わかった」と頷いて、やっとふんわり笑ってくれた。
< 44 / 112 >

この作品をシェア

pagetop