ツカノマ・サマー

「すみれちゃん、じゃあ、隠れててね」

「うん!」



小声で言い合い、私はトイレの中へ。

真夏くんが玄関ドアを開ける気配が聞こえた。



「早かったね」
と、真夏くんの声が聞こえる。



「うん、このあと用事があるから」
と、言ったあきらの声が、高い声だった。



(えっ!?)



あきらって……。






女の人だったの!?






勝手に男の人だと思っていたから、驚いた拍子に、トイレのドアに体をぶつけてドンっと音がする。



「えっ、何!? 何の音!?」



あきらが怯えた声を出す。



「なんでもないから」
と、真夏くんが言う。



「本、わざわざ返しに来てくれてありがとう。遠いのに、ごめんね」

「あ、ううん。真夏の顔も見たかったし」



(……はぁ?)



真夏くんのこと、呼び捨てにしてるの?

いや、その前に。

『顔も見たかった』って、あきらかにアピールじゃん!!



「元気にしてるの? 真夏、ごはん誘っても来てくれないんだもん」
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