ツカノマ・サマー

「ほら、用事があるんでしょう? あきら、わざわざありがとう。また夏休みが終わったら、学校で会おうね」



あきらはしぶしぶといった様子で、真夏くんに「またね」とだけ言って、玄関で靴を履いた。

ドアを開けて、私を見たあきらは、
「もう推しません」
と、はっきり言って、「ふんっ」とあごを上げて出て行く。



(……す、すごい人だった……)




あきらが帰って、私は全身の力が抜けたみたいにぺたんと座り込む。



「ごめん、すみれちゃん。あきらが色々失礼なことを言っちゃって」



そう言う真夏くんを、私はキッと睨む。



「私のことは“ちゃん”付けなのに、あきらは名前を呼び捨てなんだね」

「えっ?」

「それにあきらのしたことで、真夏くんに謝ってもらうと、なんだか複雑だし」

「?」



私は不満だった。

真夏くんの近くにいる女の子は。

いつだって私がいい。

私だけがいい。
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