ツカノマ・サマー
「すみれちゃんのことは、すみれちゃんって呼びたい」
真夏くんが私の前にしゃがむ。
「なんで? あきらは呼び捨てなのに? 家族でもない異性を名前で呼び捨てにするなんて、真夏くん、珍しいよね?」
「あきらは、みんなが“あきら”って呼んでいるから、まぁ、自然とそう呼んでいるけれど」
「……?」
真夏くんは私の頭にそっと手を優しくおいて、二回ほどポンポンと動かした。
「すみれちゃんのこと、呼び捨てになんかしない」
(えっ……?)
それって、どういうこと?
真夏くんの言い方で、勘違いしちゃいそう。
(大事に思ってくれているって、受け取っちゃうよ?)
いいの?
私、また浮かれるよ?
「それより、すみれちゃん」
「ん?」
「お仕事のこと、きっときちんと考えているよね?」
「……うん」
「オレ、すみれちゃんのことを信じているから。あんな悪い記事のことで、潰されたりしないでね」
真夏くんの言葉に。
ふいに泣きそうになった。