ツカノマ・サマー

「いただきます」



真夏くんはそう言って両手を合わせた。

急に恥ずかしくなってきて。



「あの、無理はしないでね!? 美味しくないと思うし!!」
なんて、私が止めてもニコニコしながら、真夏くんはおにぎりを手に取った。




ひと口、パクッと食べる真夏くん。




「…………、美味しく、なくて、ごめんね?」



顔から火が出るかと思いつつ、呟いた。



「色んな味がする」
と、真夏くんはニコニコしている。



「えっ、でも美味しくないでしょ? 失敗したもん」

「失敗?」



真夏くんは咀嚼(そしゃく)しながら、きょとんとしている。



「わ、私、ごはん作ったこと、ないから!」



普段からどこかで買って来たり、外食したりしていて、自炊をしていない。

もっとお料理って簡単に作れると思っていたのに。



(奥が深いんだな)



世の中のお料理をしている全ての人に、今更ながら尊敬の気持ちでいっぱいになる。
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