ツカノマ・サマー
買ってきたのは、真夏くんが好きでよく食べていたカップアイス。
真夏くんの前にさりげなく置くと、真夏くんは少し目を細めて、
「よく覚えているね」
と、笑った。
覚えているよ。
当たり前じゃん。
だって、好きな人の好きなものだもん。
それって、私にとっても好きなものだし、尊いんだから。
「……それで、どうしたの?」
と、立ち上がり、キッチンからスプーンを二つ持って来た真夏くんが私に尋ねる。
「何か、悩み事でもあるの? つらいことを誰かに言われたの?」
「……だ、大丈夫だよぉ、元気だよ」
そう言いながら、私はアイスの蓋を開けようとした。
指に力が入らなくて、なかなか開かない。
苦戦していると、
「貸して」
と、真夏くんの手が伸びてきた。
その時。
ほんの一瞬だけど。
私の指と、真夏くんの指が、触れた。
ドキンって心臓が跳ねる。
触れた場所が熱を持つ。