ツカノマ・サマー
「すみれちゃん、髪の毛」
と、真夏くんが私に手を伸ばした。
「っ!」
頬にはりついた髪の毛を、真夏くんの指ですくってくれて、私の耳にそのままかけてくれる。
ときめきが全身にかけ巡って、目の前がチカチカした。
「真夏くん、なんか……」
「ん?」
(……今日はなんか、甘々な感じがする)
よく笑ってくれるし。
こんなふうにドキドキするようなことするし。
(心臓がもたないってば!)
…………いや、待てよ。
私、真夏くんとキスするためにここにいるのに。
このくらいのことでうろたえていて、どうする!
(しっかりしなくちゃ)
こんなんじゃ、キスなんか出来ないよ!?
「すみれちゃん?」
きょとんとした顔で。
目の前にいる、私の好きな人と。
想いのこもったキスがしたい。
「……ん?」
と、私は考え込んだ。
(想いのこもった……?)